タイに移住したい 事前に進めておくべき準備とは!?~日本の社会保険・住民票編~
前回は移住に向けての準備・検討事項として、滞在許可・ビザについてご紹介をさせて頂きました。今回は日本にある住民票、日本で加入している社会保険、年金についてどのようにすれば良いのか考えてみたいと思います。検討する必要があるのは、1.住民票、2.健康保険、3.国民年金の3つがあげられます。1つずつ順番に見ていきたいと思います。
タイ移住にあたり日本の住民票は残しておくべきか?
まずは、住民票について考えてみたいと思います。日本国内で転居する場合には、引越元の市役所に行って「転出手続き」、引越後の住所の市役所に行って「転入手続き」をするのが通常の手続きとなります。海外に移住・引越する場合にも、「海外への転出」という手続きを、現在の住所を管轄する市役所で行うことができます。海外に移住・引越する場合でも、日本の自宅は自宅として残しておき、その住所に住民票を残す方法、またご家族の住所に住民票をおかせてもらう方法で、住民票を残しておくことも可能です。
国としては1年以上の海外転勤、旅行の際には住民票を転出するというルールになっているようですが、厳密に運用はされていないように思います。
海外転出し住民票を抜くメリット
住民票を残さない一番のメリットは住民税が発生しないことがあげられると思います。住民税は世界どこに住んでいても、タイに住んでいても、住民票を日本国内の市町村に置いている限りにおいて、海外の収入も含めた収入金額をベースに課される税金となります。住民票を抜くことで、住民税を課されることがなくなるのは1つのメリットと考えられます。
また、日本での所得税削減を目的として、タイをはじめとした、海外移住を考えている方は、住民票の転出は、必須の手続きになります。
海外転出し住民票を抜くデメリット
住民票を抜いてしまうデメリットとしては、国民健康保険に加入ができなくなることがあげられます。国民健康保険に加入することの条件として、住民票が日本国内にあることが求められるためです。健康保険については、別の章で詳しく考えていきたいと思いますが、住民票を抜くと、国民健康保険に加入し続けることはできない。という点は覚えておいて頂ければと思います。
また、もう1つのデメリットが銀行やクレジットカード、証券会社といった金融機関となります。金融機関から積極的に住民票の有無を尋ねる機会は現時点、限られてはいますが、各銀行では、海外居住者(住民票が日本にない方)向けには、特別口座を用意しており、インターネットバンキングが利用できないといったサービス制限を受けることがあります。
クレジットカード会社においても、海外に転出している、日本での収入がなくなっている…となると、新たなクレジットカードを申し込んだ場合には、まず審査を通過することは難しいでしょう。現在保有しているクレジットカードについても、住民票をぬいたことを正直に申し出れば、キャンセルされてしまう可能性もあります。
証券会社についても、所得税の源泉徴収の難しさなどから、海外居住者の口座開設はできなくなっているところが多いと理解しています。私もマイナンバーを提出することができず(海外に長らく住んでいるため、マイナンバーをもっていないためです。)、証券会社の口座が解約になってしまいました。また、ビットコインを買いたい!と思い、日本のいくつかの会社に申し込みを試みましたが、マイナンバーのところでひっかかり口座開設をすることができませんでした。
冒頭でお話ししたとおり、金融機関から積極的に住民票の有無を尋ねてくる機会は限られておりますが、住民票がなくなってしまうと、新規の口座開設やカードの申し込みはできないものと考え、必要なものがあれば、海外転出前に申し込みをしておくことをお勧めいたします。
タイに移住 健康保険はどうするべきか?
次は健康保険について考えていきたいと思います。
万が一のとき、日本人が運びこまれる病院は、英語や日本語が通じる私立病院になる可能性が高く、タイでいうと、私立病院は、ホテル並みにキレイで、サービス・医療レベルも高いです。その代わり、医療費も日本に比較して高くつくことが多くなっています。風邪かな?と思って病院へ、診察・薬の処方で、15,000円ほどの支払いとなったこともあります。海外で生活するにあたり、万が一の病気やケガに備え、保険に加入することはお勧めいたします。
国民健康保険に加入を継続
先ほど住民票のところでお話しいたしましたが、住民票を転出しない場合には、国民健康保険に加入することができます。
また、日本の国民健康保険は、海外での治療についても利用することは可能です。ただ、日本の病院のように3割の負担分だけを支払い、帰宅というわけにはいきません。一度、全額立替て海外の病院に支払う必要があります。また、海外の病院の領収書は英語や現地語(タイ語など)で書かれたものとなりますので、それを日本語に翻訳してから、保険組合に払い戻しを請求する必要があります。手続きも煩雑になるので、あまりの高額にならない場合には、めんどくささゆえに払い戻しの請求をされない方もいらっしゃるようです。
次に、国民健康保険にかかる費用はどうなるのでしょうか。海外でも収入がある場合には、住民税及び国民健康保険料も、その収入をベースに発生することになります。年収500万円、40才(単身)、東京都に住民票を残した場合の住民税と国民健康保険料の合計額は年額約55万円にもなります。
国民健康保険以外の選択肢は?
以上で、国民健康保険も使えなくはないが、手続きも煩雑で、意外と保険料が高くことがわかりました。
海外移住にあたり、お勧めとなる健康保険は、民間の保険会社の海外旅行保険になります。損保ジャパン、東京海上日動といった大手損害保険会社から、ソニー損保のようなインターネット系の損害保険会社も商品を提供しています。期間や保証内容によって金額は異なりますが、年間20万円~が目安の金額となります。
民間の海外旅行保険であれば、立替払いが不要なケースも多く、緊急ダイヤルで近くの病院を調べてくれるサービスもあります。また90日程度の短期の滞在であれば、クレジットカードに付帯する海外旅行保険も使うことができます。これを機に、ご自身でお持ちのクレジットカードに付帯している海外旅行保険を確認してみても良いかもしれません。
国民年金はどうするべきか?
最後に国民年金はどうするべきか考えてみたいと思います。日本の年金財政、国民の年金支払い義務については人それぞれお考えがあるかと思いますので、その点については、皆様にご判断頂ければと思っています。
住民票をぬけば国民年金は「任意加入」へ
住民票をぬくと、国民年金は「任意加入」となります。「任意加入」とは年金を納付する義務を免れることができますが、年金を収めない期間分については、年金を受給することができない加入状況を呼びます。すなわち、年金を収めないといってペナルティを受けることはありませんが、将来受給する年金額は支払った期間数で決定されるため、任意加入時に支払いをしない期間があれば、その分、受給できる年金額は減ってしまいます。
住民票の転出の有無にかかわらず年金納付は可能
住民票を転出しない場合には、海外に住んでいても年金を納付する義務が残ります。年金の納付義務があり(住民票を日本に残し)、年金を納付しない場合には、最悪、財産の差押といったリスクもあります。年金を払いたくないと考える場合には、必ず住民票を抜き、「任意加入」とすることをお勧めいたします。
まとめ
長くなりましたが、海外に一定期間住むことを考えている方は、住民票を抜いてしまうことがお勧めです。ただ、金融機関との取引で不都合が生じる可能性があるため、クレジットカードなどは事前に申し込みを済ませておきましょう。
また、健康保険は民間のものに加入、国民年金については、「任意加入」としてから、支払をするかどうかの判断をするのが良いかと思います。
最後に、住民票の転出とは関係なく、海外に3か月以上滞在する場合には、「在留届」(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/)を提出するものとされています。こちらは主に海外に滞在する日本人の安全を守るために導入されている制度となっており、在留届を出しておく方が良いと思います。在タイ日本大使館から、コロナウィルスや、渡航規制、デモの情報など、最新情報が日本語で送られてくることは、海外居住者としては非常に助かっているサービスです。
その他、海外移住に際して事前に進めておく準備は以下をご参照ください。